A Short Trip
to the Cotswolds
 
 
こんにちは、森荏です。
今回は、コッツウォルズ地方ドライブのお話です。
「欧州妖異譚」になってからの時間設定ですが、時系列はあまり気にせず、夏の短いドライブ旅行をお楽しみいただければ幸いです。
     
 それは、楽しい週末ドライブ旅行のはずだった・・・・
 
助手席に座ってドライブするといえば、以前はアシュレイとだけするものだった。
それが、こうしてシモンの運転する車に乗っていることに、ユウリは感慨深いものを感じた。
(初めて出会ったときから、もう何年? お互いに運転できる年になったんだね)
 なんだか嬉しくなってにやにやしていたら、シモンがちらりと横を向いて見た。
「何がおかしいんだい?」
「ううん、別に」
 そう言ってもシモンは首をかしげて納得しないようだったので、続けて説明した。
「シモンも運転できる年になったんだなって」
「人を年寄り扱いしないでくれないか」
 シモンが苦笑いする。
「いいじゃない。運転が上手いって褒めているんだから。そういえば、アシュレイも運転が上手いけど、これって才能なのかな、やっぱり」
「―――――――――そうかな」
 シモンの顔の表情が凍りついた。
(あれ? アシュレイの名は言わない方がよかったかな?)
 シモンの表情に変化はないが、まとう雰囲気が変わったことにユウリは気がついた。
 
 そこに現れた、例のあの人・・・
 
「アシュレイ、もうやめてください」
 抗議しようとするユウリの前に半身をすべりこませ、シモンは落ち着いているが厳しい声で言った。
「何の権利があるかと言いましたね。もちろん、良識ある一般人としての権利ですよ。キスをするならもっと人目につかない場所でどうぞ」
 それを聞き、アシュレイは呆れたように首を振った。
「恋人同士の逢瀬にいちゃもんをつける、うるさ型の風紀委員の言い草だな、まるで」
「………誰が恋人ですか、誰が」
 ユウリは蚊の鳴くような小さな声で抗議する。顔が急に熱くなってきた。
 つまり、先ほどアシュレイとキスしていた現場をシモンにしっかりと見られてしまったということだ。
 固く抱きしめられ、うっとりとキスしていなかったか? 
恥ずかしさのあまり、身体の芯がぎゅっと絞られるようだ。先ほどドライブで失敗したときの比ではない。
(シモンはどう思っただろう)
 広い背中を見ながら、こわごわと思う。
 アシュレイは、そんなユウリの心のうちを見透かしたかのように、にやりとした。
「『友人』とか『親友』なんて間の抜けたポジションを持ち出さなかったところは、まあ認めてやろう。
 パブリックスクール時代だったら、筆頭代表としていかようにも権利を主張できたのに、残念なことだな。
 今じゃ、情けないほどお前はユウリにとって何者でもない存在だ。
 一つ尋ねたいんだが、もし俺とこいつが恋人どうしだとして、人目につかない場所でいちゃついていたら、お前はまたさっきみたいに邪魔に入るのか?」
「当然でしょう」
 シモンは、さらりと言葉を返した。
 
 
 
 ・・・どうしてこんなことになってしまったのか。
 果たしてシモンはアシュレイを撃退できるのか? 
 前後と続きは同人誌でどうぞv
 
 
 
 

 

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